水着のあいつ
2020.9.1. 01:05
ラヴァの密告お手紙からの続きであります。夏はすぎども、まだまだ海やプールに浸かれる気温でありますね・・・。
「あーあ、肩こりやばいわ」
翼がぶるぶると震えながらぐっっとのびる。
「あーあ、寝そうやった」
あごが外れそうなあくびと、正直な気持ちがこぼれだす。
今日はある騎士団のお出迎え隊にはいるにつき、きちんちしてったんやけど、柄に合うてへんから疲れる疲れる。
あーあっつ。と涼はアバドンレザーの胸元をがさつくほどく。
「あはん~空気がうまうまや♬」
「ほんまにさ・・・あパン買うてってええ?」
「ん、ええよ、サブレも買うん?」
「ん!」
アーモンドサブレも買って上機嫌で帰ってきたが、部屋の中のちらけた筆記用具が目に入る。
(せや、返事書かないかん。)
丸パンがあたまによぎる。サブレをくわえて行儀悪く座り、プレートアーマーはライトアーマー状態にして机に向かった。
文章は出てくんねん。やけど、、コイツ宛になるとどうもすすまへん。
~カンパンへ~
ピアスおおきに。やっとおさまりようなったわ。夏のおしゃれも安泰やでw
んで、きり忘れとった請求書の分、入れとくわな。ここの工房無くなったら、俺はどこ行ってええかわからんのやで!
話変わるけど、休みはお前に合わせるで。俺もお前に会いたかってん。クロコダイルアイランドの遊泳海岸とか、どない?ギランでおいしいもんかってこや。
手えあいたらまた返事ちょうだいや。
追伸 手間賃はきちんととれよ。
空飛び封筒に入れて、アデナも突っ込んで、ほーーーらとんでけーーー!
なんや重たげに飛んでったけどがんばりや~!
今日はカマエルのお客さんが多かった。最後の女戦士さんなんて、「崩れないように気をつけるから」と右の丸パンをそっと触って大変感銘を受けていた・・・。その人はおしゃれ用イヤリングの修理依頼で来ていたっけ。わたあめみたいなふあふあの髪に、いちごジャムみたいなかわいらしい赤。
とってもうれしそうだったんだ・・・。
キュキュ、キュルル
「ん?うん。今日は簡単なものにしよっか。ちょっと疲れたもんね」
キキキ、キュキュッキュ
ラヴァがハンドクリームを鼻先で持ってくる。金属の削り屑と乾燥で真っ黒くなった自分の手に気づいた。
「・・・そっか手荒れみててくれてたんだね。ありがと、ラヴァ」
キュルルリ♬
手についた屑り屑を丹念に洗ってクリームを伸ばす。ローズマリーとラベンダーの香りがあたいとラヴァを包み込み、その中でめいっぱい息を吸った。
心が、ほぐれていく。
「さ、帰ろ!」
リュックに荷物をつめて、ドドワーヴンギルドの2階にもどると・・・
「おっかえり~~~!」
「ただいまぁ~!」
リエッタが手紙をぶんぶん振っていた。
「気になる彼からお手紙来てるよ!早く読んだげなよ!」
「リクからって、言い方!あたいまだ、ちゃんと・・・いえてないんだから///」
言い返すうちに尻すぼみ。リエッタは声を潜めた
「ね、お返事のこと、あたいにもちょっと教えてよ?」
「な、なんでよ!」
「あんたのピュアな幸せを応援したいのよ!こんなの銭勘定損得、なんにもないっ!全力でサポートするんだから!」
まくしたてるように言われてあたいは後ずさり、手紙だけもらって自室に走る。そして、いつの日かつくって、戦闘に使うことはなかった紅い刀身のダガーで封を切る。
(ちょっとずっしり、なんか、やな予感・・・)
・・・ばれてたようで、中にはきっちりお代がはいってた。
・・・・でも、
「ギランの遊泳海岸かぁ~いつぶりかなぁ」
キュキュキュ
「あ」
海で泳ぐってことは、水着やそれに準ずるものを着るんだよね。。。ないよ、覚えてないよ?!
「返事の前に、服探さなきゃ~~~!」
当日はええ天気。遊泳海岸は夏らしく暑い。海の家にいくだけでしっとり、べたべたや。
早う着替えたい海に浸かっとりたい。せやかて一人じゃおもろない。
「おはろうさん、おっちゃんテント借りるで。」
「おう、使ってけ~」
「さて、どれにしよかいな」
ああああぁぁぁ!!!葉っぱがカユイ!!!無理!いーーーーってする!
ぬぎぬぎっ ぇんっっ!!! バシッ(脱ぎ捨ててカバンに叩き込む
芸がない。
これなし、ハイ。
(ん・・・・
おっ
これええやん。腰履きにしたらもっとええ感じやん。これでいこ!
俺はカンパンが待っとる場所目指して歩き出す。
「おおきにおっちゃん、用事済んだわ」
「そうかそうか、大仕事がんばってこいよっ!(瑞々しいのぅ~~」
「おーよ!」
ラヴァの防塩加工よし、防水完璧、次は・・・あたいだ・・!
キュッキュキュー♪ バシャシャシャシャーー キュルッキュルル~~~!
水を走り抜けてラヴァはご機嫌。海を楽しむ人はちらほらいて、なんだか羨ましいような気がした。
あたい、リクがよろこぶかわいいドワーフになれるかな。
「すみませ~ん!ロッカー借ります~!」
「整備にはちときついぞ~」
「大丈夫!ラヴァは完璧にできたんだ」
さぁ、マーブル様、サイハ様、どうかあたいに魔法をかけてください・・・!
これは、芸がない・・・
キュキュル~?
ほんと?これ、好き?
キュキュキュ
じゃ。これもアリってことで・・・w
んんんんーーこれはない、これ、あんま似合わないっ!!!ってなると、最期のはこれ・・?
思い切ってサンダルに合わせてみる。くるくるとスピンして甲高いねじ音を響かせた。その音はあたいに、本物の勇気をくれた。
「よし、待ち合わせ場所まで出発!」
キュッキュー!
「(・・あの嬢ちゃんえらく張り切って言ったな、健闘を祈るぞい!」
砂浜を抜けてテレポート地点からも海の家からもわかりやすい場所できょろきょろとする。
でも、いざまってると
ドキドキする。何しゃべる?何して遊ぶ?もうあたいらは「こども」じゃないけど、「おとな」とはいえないや。それにあたいはリクが大好きで意識してる。余計にわかんなくなる。 あざとい子なら、よかった。あいつの喜ぶこと全部わかっちゃうんだろうな。
ちょっと自信がなくなってきたころ、黒いサーフパンツが歩いてきた。
「ごめんごめん!待たしたわ!!」
日に焼けて汗ばんだ肌はリク特有の洒落っ気のなさと相まってすごく色っぽく見えた。そんなあいつは、どこみてんだかわからない細い目の、瞳の色がわかるほど近くにいる。
・・ちょっといい匂い。なんの匂いかわからないけど、すき。
「おまえちょっと暑気おこしてんちゃう。」
「え、そう?大丈夫だよ!」
「そ?」
ほないこか。と笑う顔は優しい。いつもより近い距離で腕があたる。
「今日のワンピ、新しいやつ?」
「え・・・」
「・・・よう似合うてるわ。いつものんも好きやけどね。」
キュキュ??!
一瞬平衡感覚を失う。あんたのプライドの配分、ほんっとどうなってんのさ。なんでそう簡単に言えちゃうの。そうだよ、あんたに見てほしくて、かわいいっていわれたくて、精一杯背伸びしてるんだよ。
根性でよろめきを抑え込む。
「やっぱ顔赤いに」
リクの手があたいの肩にまわる。畳みかけて心臓が裏返った。
気合で戻す。
「そそうかな・・?」
「なんか冷たいもの飲も。炭酸とかどうや?」
あ。気分代わりそう「夏の浜辺のあの子」になれる気がする。
「うん、ココヤシサイダーとか、マーメイドスプライト、飲みたいな。」
「ええね~夏メニューわかっとるやん」
「えへへ」
あ・・これってなんだか「っぽい」感じ。
「な、なんでカップルメニューしかあれへんの・・・」
「最近多くてな~ちと発注を思い切って見たんじゃ、すまんそ・・(海爺からの無線はきっと彼らのことであろう。悪く思わんでくれ・・)」
ちいさな一人サイズココヤシはなく、カップルサイズヤシと、飲み口が二つにわかれたマーメイドスプライトしかない。あと大皿料理・・・
「ん~このへんにしよか。ちょっと面影あるしw」
あたいらは串焼きセットとマーメイドスプライトを買って砂浜をさまよった。
ちょうどいい木陰のある島があり、そこでご飯を広げる。他の陸地にはラジカセで音楽かけてるヒューマンとカマエル。ちょっと離れて感じた。
「あんなんカップルちゃうやん・・・なんでねんろ・・・まぁえっか、ほぃ」
「あ、ありがと」
ライムとエルダーハーブの香りが火照った体をすーっと冷ます。リクは串焼きをかじり、ソースをペロン。なんだか、色気におされてついそっぽむいちゃった。
「んまーい」
日焼けした肌に小さな汗の水滴が伝っている。
「好きなん食いや、苦手なんは食うたるで。」
不意打ちにどきどきしながらも、リクはなにしでかしたかわかってなさそう。あたいもソルト&ペッパー串をとり、のどに詰まらないように食べる。
「ありがと、リクもこれ、飲んでね・・・・ちょっと不便だけど」
「ん、おおきに。ほなちょっともらうで」
はいどーぞ、する前にリクは身を乗り出した。くわえたストローはあたいの!!
短髪が胸にあたる、息遣いもすごく近い。飲んだ時ののどの音も・・・。
目が回ってきた。
キュキュ
ラヴァのさりげないセービングでひっくり返るのは回避。
「・・・あ!これお前のか、ごめんごめん」
飲み切ってから気づいたか!
「無、無頓着すぎだよ!!」
「はっはっはwすまんすまん」
にこ、と舌を出すあいつは茶目っ気のある小悪魔だ。照れた勢いで串焼きを抱え込む。
「なーあ、機嫌直しーや」
「いいよこれ食べるもんっ」
(やってもうたかな)
海へ行ったり来たり、時間は建てどもあぶりするめのようにカンパンはまるまたまま。水掛けてもあかん。ラヴァが言うてもあかん。
「ごめんて」
「・・・・」
ゆっくり俺の方に向くカンパンはくしゃくしゃの照れた顔しとった。
「な、なんとしたんや・・・」
「ずーーーっと好きな人に!あんなんされて平気なわけないやろーーーー!!!どないかなってきそうや!」
フェイタルカウンターとスタンショットとフェイタルカウンターをくらった気分。方言まで移ってもうとるやないかw
なんでやねん、なんでお前が先言うてまうねん。俺もお前が好きやから、きちんと伝えたかってんや。
口を引き結んで海から上がる。カンパンの前に座った。
「・・・あれは、わざとっちゃうで」
「??!!」
キュキュキュキュキュ!!!!
あかん、ラヴァが戦闘モードになってもうた@
「やけど、お前のこと、ずっと好きやで。」
カンパンの息が震えとる。思い切って俺はほっそいその肩に腕を回した。
「ふぇ!」
「俺の中で。アデンいちの職人さんや。」
「そんな・・・そんな・・・ずるいよ・・ちゃんと会って、あたい、言うつもりだったのに・・」
丸パンが胸にこすれる。だんだんとほつれてきててこしょばい。
「なんも気づかんかったわけないやろ。」
半分嘘や。かっこつけるのも柄やないし、ぎゅっと近くへ引き寄せてそっと囁いた。
「半分、嘘。俺がかってにドキドキしてるだけやったら・・って思って不安やった」
「それも、嘘でしょ。あんたはいっつも飄々としてて、なんか余裕あるんだ。」
「嘘ちゃうがなw」
「表情も変わんないし、その、こげ茶の目は好きだよ、大好きだけど不安になる」
「嘘やと思うんなら、心拍きいてみ」
小さな頭を自分の胸に押し当てる。早鐘打っとるこの音きかれるんは恥ずかしいけど、いまさらなんやっちゅうねん。
「・・・・・」
「どきどきしてるや」
「せやろ」
細い腕が背中に回り、ソフトに力が入った。
「・・・リクも一緒だったんだ」
「・・せやよ」
これは、本物の気持ちだったんだ・・・
馬路さん , 黄昏ぎつねさん , バニラルンさん 他5さん が 「いいね!」と言っています。
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ラブストーリに挑戦ですかw
いいですね^^b
シレーアさんの動画のように、セリフや心情を色分けすると。
掛け合いがわかりやすくなるきがしますw -
いいですね!所々に入れる挿絵とか、味があります。
僕なんかは文才が無いんで、動画の動きでごまかしながら作品作ってます。
こうやって、色んな才能を持った人が集まって一つの作品を作ると、大きな作品が出来上がるのでは、と思ったり。僕には協調性が無いから無理ですけどw -
っかー、青春ですね! キュンキュンきますね! 海爺さんたちもGJw
現実問題、真夏のプレートアーマーは、カーワックスの宣伝のように、
金属板の上で目玉焼きができそうなくらい熱くなるかもしれません。
手間賃を取ろうとしない(親しければなおのこと)のは、あるあるです。
カンパーニュさんの丸パンはどうやってあの形に結っているのか、
ドワーフ七不思議のひとつです。 さてさて、ではお二人ともお幸せにw -
愛留さん
そろそろ完結させねば埒が明かなかったので、書いてしまったでありますw
やはりこまやかな所に工夫することで読んでもらいやすくなるであります…!名監督どのと名ひーらーどのには学ぶことがいっぱいであります…!
しれーあ2世さん
写真の才がなくて毎度四苦八苦でありますw動画の動きでより生き生きと浮かぶ人物像もありますから、新作の度に自分からわくわくしてるであります!
サーバー外でも、そんなイベントがあればぜひ参加したいでありますよwアイデアがさえるでありますね〜。
千代りんさん
ついに完結、でありますw恐ろしいほど長くなってしまいましたがw
重装備は夏場着てられないでありましょう…自分も軽装備職でありますから。目玉焼きと蒸し鶏のセットなんて、有り得てしまいます@
むむ、やはりあの押し問答はよくあるのでありますねw
魔法が使えないとはいえ、スタイリング魔法くらいはどの種族も使えそうであります。残る6不思議分が気になって仕方ない…
書店と工房の店があったら、もしかするかもしれないでありますw -
少女漫画的要素濃い目とは@v@
ところどころ描写される食べ物、スイーツ、ハンドクリーム、匂いなどなどが
いい感じ。
生きている人たち、感情をもって今いきているキャラって感じがします^^ノ
冬になったらふたりはドワーフ村でスキーに行くのかな。
それとも温泉地帯で温泉かなって想像~w -
バニラルンさん
いやらしやろうは出番なしでありますっ!w
物語中にでてくる、自分らの生活にもありそうなものになんだかわくわくしたのであります。それを、ちょっと使ったでありますw
生活感を読み取っていただけて自分、小踊りでありますよ♪
冬は…どこへ連れていきましょうかww -
一つ一つの情景を見てとれて、串焼きの味やシュワッと爽やかな炭酸飲料が鼻に抜けるところまで想像できました。
空飛び封筒、防塩加工などの言葉のチョイスもいいですねえ!
お着替えのときのああでもないこうでもない、わかります。
髪や腕が触れること、視線、なんて初々しくこそばゆい感情を伝えてくるのでしょう。
布団に入る前に読ませていただいたのですが、キュンキュンにまにまで良い夢見られるぞって確信しましたもの。
次の作品も(というか本来カンパンちゃんとリク君より先に紡がれるはずだった物語達もw)とてもとても楽しみにします。
あ、その前にきっとお会いできるでしょうが、リアルの方も大事になさって、よければこぼれ話なぞお聞かせくださいね。
あなたの書く文章が本当に好きです。 -
馬路さん
読み取りが、深いのであります・・!遅くなってもうしわけないのであります@
いい夢の素になれていたら幸いであります('ω')
ヒュマメイとオークモンクのお話や、アシュレイの冒険も読んで楽しい夢の素にせねば!
自分の長い話をいつも読んでいただいて感謝であります。文章を、この秋キリっと磨き上げるでありますよ~。こぼれ話は、カンパンのようになりながらでよければぽつぽつと・・w