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幼女連れ狼 第肆話 ~竹林村の少女と幽霊~

幼女連れ狼 第4話目 ~竹林村の少女と幽霊~





一人の士と一人の幼女。



朱仁は国が亡び、家族を亡くして心を失くしていた士。



一方の和織は幼いながら、人種的迫害にて感情を失くしていた幼女。



そんな二人が出会い、何かを感じて共に旅をすることとなったお話。



その次なるお話は・・・!



 



 



海を見ようと竹林村へと訪れた朱仁と和織。



そこで二人は元気な少女『リリ』とその友人で村を守る幽霊『葉月』と知り合う。



そして、リリに案内されて初めての海にはしゃぐ和織。



泳ぐ少女二人とそれを微笑ましく見る士一人に、邪なる手が差し掛かろうとしていた。



 



海で笑みを浮かべる和織とリリ。すっかり仲良くなったようで、リリが和織に泳ぐ練習を教えているようだ。



波に時折、身体を攫われそうになりながら、少しずつ泳ぎを覚えていく和織。



そんな中で浜辺でいた朱仁は、ふと視線を逸らす。



浜辺の奥の方から、何やら異様な男たちがやって来たからだ。



そっと視線を向けると、同じ様な服を身に包んだ男たちがいた。荒くれた感じの風貌に朱仁は良からぬ事態だと直感する。



(ふむ、こやつ等が海賊でござろうかな。独特の歩行でござる。)



船の上という不安定な場所で活動するが故に、自然と身についた重心の移動。かつて船上でも戦った経験のある朱仁はそこに注視した。



そして海賊は近寄るにつれて武器を手にし、いきなり朱仁に襲い掛かってきた。



「…なるほど、流石は海賊。奪うがために何の躊躇もござらぬか。」




落ち着き払った態度で立ち上がると、海賊の刃が振り下ろされる瞬間に蹴りつける。相手がバランスを崩した隙に、その肩口へ峯打ちを叩き込んだのだった。



呻き声をあげて崩れ落ちる海賊。同時に仲間をやられて殺気立つ海賊たち。しかし…、



「遅うござる。」



数多の戦場をくぐり抜けた朱仁にとって、海賊たちの行動はあまりにも遅すぎた。



敵を前にして隙だらけなど、戦場においては在ってはならないこと!



瞬く間に辺りにいた海賊たちを叩き伏せてしまったのだった。




「強めに打ちこんでみたが、これで暫くは動かぬでござろう。さて、…くっ!しまった。」



海賊たちを叩き伏せて海に目を向けた時、一隻の船が北へと離れて行く。



その船上に見えるは二人の子供たちの姿。



朱仁は急いで駆けるがすでに沖へと出た船。海上ではどうにも出来ない朱仁は舌打ちしながら、船が行く先を見ているだけであった。



 



「う、うぅぅ・・・。」



大きく呻きながら目を覚ます。すでに捕えられたその身は縄で縛られ、



何とも身動きできない状態だった。その目の前に刀傷のついた顔の男がいた。その横には異様な雰囲気の少女が睨んでいる。




「さて、早速聴くでござるがお主等、子供二人をどこに連れて行ったでござるか?



刀傷の男、朱仁が目を覚ました海賊に尋ねる。



先程の騒動で葉月もすぐに駆けつけていたが、ちょうど船が沖に出てしまった時だったので、何もできなかった。そして二人は倒れた海賊を縛り上げると、海水を頭からかけて起こしたのだった。



目を覚ませた海賊は状況を悟ると、嘲笑うかのように喋り出した。



「へっ、今頃すでに売られ、ギャァー!」



「御託は要らぬ。応えぬなら次は首を刎ねるだけにござる。」



海賊の太ももを刃が突き刺さっていた。悲鳴をあげる海賊に対し、朱仁は冷静な言葉で問いかける。しかし、その瞳は感情を一切持たぬ冷徹な目であった。そう、幾多の人を斬ってきた故に纏う気配。



その冷めた言葉に他の海賊たちまで肝を冷やした。



同時に葉月も先ほどまでの朱仁と別人だと驚きを隠せない。



「もう一度問うでござる。子供たちは何処でござるか?



冷たい言葉と同時に、腿を刺されて涙目な海賊へと闘気をぶつける。その気は数刻前に葉月へ当てた気とは全く異質なほど冷たく、圧倒的であった。



その闘気に晒されて海賊たちは泡を吹いて意識を失う。だが、何とかそれを直接受けなかった海賊は、股を異臭を放ちながら湿らせ、ガクガクと震えながら言葉を漏らした。



「こ、ここ子どもたちは、き、北のアアアジトにいるだよ!お、ぉおねげぇだ、ころさないでけれ!」



「北のアジト?



ギロッと朱仁が睨む。途端、それを言った海賊は「ヒッ!」悲鳴をあげて泡を吹きながら意識を飛ばした。



「クッ、これでは詳しく分からぬではござらぬか!」



怒気を孕んで言う朱仁。その横で葉月が言う。



「北のアジトなら場所は分かるよ。」



即座に朱仁が視線を向けると、葉月はしっかりと頷いた。



「案内するよ。すぐに行こう。」



「うむ、よろしくお願いする。」



朱仁は容赦なく刀を抜き取ると、血を振り払って納めた。



「こいつらは、いいの?」



「捨てておいても良かろう。村で警備の者に伝えたら任せるでござる。」



葉月は頷くと村へと駆け出した。そして朱仁もその後を追い駆け出す。



「待っておれ和織。すぐに迎えに参る!」



 




一方、海賊たちの北のアジトに連れ去られた和織とリリ。



暗い洞窟の中に二人だけが閉じ込められていた。




「むむう、どこでしゅかね?ここは。」



辺りを見回しながら呟く犬耳の少女。一方でリリは絶望的な顔をしている。



「ここはきっと海賊のアジトだよ。多分、竹林村から北にある場所…。捕まっちゃったんだよ、僕たちは。」



ワナワナと震え、そして頭を抱えたリリは叫ぶ。




「きっと僕たちはここでロリ〇ンたちにあんなことやこんな事されて、売られた先で『ぴーーーーー』や『ピー―――』な事になりながらごみのように捨てられちゃうんだ!



そうして項垂れるリリ。その横で和織が小首を傾げる。



「・・・?ぴぃって何でしゅかね?



そう言った後、リリは立ち上がって和織の両肩に手を置いた。そして、



「こうなったらワオちゃん、脱走しよう!



「脱走でしゅか?



「うん。幸い僕たち子供だけと思ってるから見張りとかは少なそうだよ。僕が何とかするから、ワオちゃんは逃げて助けを呼んで。」



「何とかってどうするでしゅか?しょれにあたちは場所が分かんないでしゅよ。」



「う・・・。」



再び項垂れるリリ。何とか和織だけでも逃がそうと思ったが、どう考えてもこの幼い子が村に着くのは難しいと思う。幸いにも近くに剣を見つけたので多少はやっつける自信はあるが、果たして和織を守れるかが疑問でもある。



そうこう考えてると、海賊が一人入ってきた。



「なんでぃ、泣いてるかと思ったら結構平気そうだな。」



鼻持ちならない嫌な態度な海賊。リリは和織を背中に前へ出ると、ギッと睨んだ。



「僕たちをどうするつもりなの?



「ふん、分かっているだろ?



薄ら笑みを浮かべて海賊が言う。するとリリが蒼ざめた顔をした。



「おお、良い顔するじゃね‥‥」



「やっぱり、僕たちをひん剥いてさんざん己の欲望を満たした上に人身売買で売って、ゴミ屑のように僕たちを弄ぶ気だね!このロリ変態!」



「だぁー!何言ってやがんだこのマセガキは!お前たちは竹林村に対する人質なんだよ!テメェらみてぇな色気も無ぇガキ相手にするかってんだ!」



「そんな事言って油断させとく気だね!分かってるんだよこの変態たちめ!絶対思い通りにはなってやんないぞ。」



思い込んだら聴く気のないリリ。思わぬ非難に海賊が慌てに弁解する。



そんなやりとりを2・3回繰り返して海賊が剣を抜いた。



「このクソガキ!ちょっと黙らせてやらにゃならねぇな。」



「うぐぐ・・・・」



流石に刃を取り出されては、引き下がるしかない。しかし、海賊はよりにもよってリリの顔に刃を近づけた。



「小生意気なその顔にちょっとくらい傷つけた方が、村も言うこと聞くだろうな!」



「ちょ、ちょっと待ってよ!そこは無傷の状態で交渉でしょ!!



「そんな決まりなんてこの世にゃ無ぇんだよ。」



ニヤついた海賊がリリに刃を寄せて来た。すぐそこに防ぐべき剣があるが、今の状況では到底間に合わない。



諦めと間近に迫る刃の恐怖に、リリはグッと目を瞑った。



 



 



 



一方、朱仁と葉月は海賊のアジトに向かう途中で、その足を止められてしまっていた。



陸地を進んでいくため、海岸から内陸に入って移動しなければならない中、当然そこにいるのは山賊たちである。




通りかかった二人に難癖も付けず襲い掛かってくるため、走りながらとは言え、戦闘しながらは流石に時間を喰わされていた。



「ええぃ、面倒でござるな。」



焦り気味の朱仁。一刀のもとで斬り伏せているが、やはりイラつきが抑えられていない。



「ここは山賊の縄張。ある程度は予想してたけど、これはちょっと異常ね。」



葉月もまた、名の通った剣士だった事で山賊たちをあしらっている。だが、友を思う焦りは朱仁と同じであった。




「キリがござらぬ!この愚者どもめっ!!



和織たちの身を案じながら、かつて狼と呼ばれた士の剣は次々と山賊の命を奪って行ったのだった。



 



 



 



「なにしてるでしゅか?」



場面は再び海賊のアジト。リリの顔に迫る刃。それを素手で摘まんだ和織がその円らな瞳を海賊に向けて尋ねた。



「! 離しやがれ・・・おぉ?」



海賊が剣を引こうとしたが、和織にもたれてビクともしない。



「女の子のお顔に刃物を向けちゃダメって言ったでちょ―!




そう叫ぶや否や、和織は掴んだ刃を取り上げると、近くにあった長い獲物を手にして、それを海賊の頬に強打させた。幼く小さな和織の外見からは想像もできない『ぱぅわぁー』が発揮されて、海賊は吹っ飛び壁に激突して意識を失った。



「もぉ~、ダメでしゅねぇ。大人になったらちゃんとじょ~しきを知らなきゃダメダメでしゅよ!



そう言いながら、海賊の帯を取ってその手足を縛りあげる。



朱仁がやってるのを見て覚えたらしく、ぎこちないがきちんと縛り上げたのだった。



「ワ、ワオちゃん凄いねぇ・・・。」



リリは驚き顔のまま固まっていた。それに対して和織は、



「こんなの朝ご飯前でしゅよ。それよりどうするでしゅか?」



特に変わった様子も無く、先程の脱走の話を続けようとしていた。



その様子にふと思い出すリリ。



(会った時にやっつけるって言ったの、嘘じゃなかったのかぁ!)



そう思い直し、武器があるので自分の剣術と和織の膂力でなら、あっさり村へ帰られるんじゃないかと思い至る。



「そ、そうだね。うんうん、もうこうなったら出て来る奴らをやっつけながら村に帰ろう。」



「分かったでしゅ!」




実は意外と世間知らずながら、変に力を持っている二人の少女の大暴走が始まるのでした。



 



 



「クッ、思わぬ時間を喰ってしまったでござるな!」




ようやく山賊たちを倒して北のアジトへ辿り着く朱仁と葉月。執拗な山賊の襲撃についつい愚痴が零れる。



「でも、海賊と山賊の挟み撃ちは避けたかったから仕方ないわ。とにかく急ぎ探しましょう。」



葉月は内心、あの数の山賊相手によくぞまぁ、この短時間でという感想を持っていた。知る限りでは、多分あの街道周辺にいる山賊たちは壊滅しているはずだ。それほどまでに朱仁の剣技は凄まじかった。



あの対峙した時、斬り合わずに済んだことを安堵していた。



そしてアジトに通じる岩の洞窟を抜ける。するとそこは予想していなかった状況が起こっていた。



砂浜に面した海賊たちの基地には、既に多くの海賊が横たわっていた。



「な、何が起こっているの?」



葉月は横たわる海賊に目を凝らす。どうやら死んではいないようで、意識が飛んでいる。



中には腕や足に傷を負った者もいた。それを見て確信する。



「この剣筋は…、リリが戦った?」



一緒に過ごす中で、護身用にといくつか剣を教えた事がある。元々、ある程度の剣術は出来ただけあって、呑み込みの早いリリはしっかりと技を修練していた。



だけど、その剣技に意識を飛ばすほどの技はない。だからこそ、疑問に思うのだ。この打撃は誰の仕業なのかと・・・。



「あちらで声が聞こえるでござるな。」



朱仁が視線を送った先。葉月は視認してから二人でその方向へと向かった。そして辿り着いた先で・・・、





「てぃ!」



「ちゃぁあああい!」



リリが相手の腕や足を剣で攻撃して戦力を削ぐと、和織が獲物を振り回して海賊を吹っ飛ばしていた。



小柄ですばしっこい二人のコンビネーションは見事で、海賊たちは攻められずに倒れていく。



そして周辺の海賊たちを倒しきると、二人でハイタッチをしていた。



「よしっ!これでもう逃げられるよワオちゃん。」



「あい。」



(いやいや、倒し過ぎでしょ!



そんな感想を持った葉月だが、あえて今は言うべきではないと飲み込み、朱仁と一緒に二人の下へ向かった。



「リリ。」



「あ、ロンジー!迎えに来てくれたの?



(いやいや、そこは助けに来てくれたのって・・・もういいや!)




心の中でツッコみを入れる葉月。リリの無事な姿に笑顔を送った。



「まさか、こうなってるとは思わなかったよ…。まぁ、無事でよかった。」



笑顔で見つめる二人。その横で朱仁はじっと和織を見つめていた。



「戦ってたでござるか。」




「うぅ・・・、リリちゃんと脱しょーするのに、やったでしゅ。」



「何と無茶な真似を…、ケガをしたらどうするでござるか。」



「脱しょーすることしか、考えてなかったでしゅ・・・。」



「・・・。拙者はお主に戦ってほしくはないでござるよ。」



「・・・ごめんなちゃい・・・。」



その様子にリリが何かを言おうとするが、葉月がそれを止めた。



朱仁は一度大きく息を吐くと、和織の前に膝をついた。そして手を和織に伸ばす。叱られていることで、目を瞑ってビクッとする和織。



しかし、次の瞬間、和織は朱仁に抱きしめられていた。



「攫わせてしまった事は拙者の失態。怖い思いをさせて申し訳ござらぬ。



されど、お主のこの手は幸せを掴むため在るのでござる。決して人を傷つけるためではござらぬ。己が身を守るため仕方ない時はござろうが、そうでなければ、無闇に戦わぬようして欲しいでござる。」



和織に対する思いが詰まった言葉。その優しい言葉に和織は啜り泣きながらぎゅっと朱仁の服を掴んだ。



「あい。分かったでしゅ。」



「うむ。そしてよくぞ無事でござった。良くがんばったでござるな。」




「・・・あぃ・・・。」



聞き取れぬほどの返事をして、和織は朱仁にしがみ付いた。



そんな様子にリリが感動してボロボロと涙を流し、葉月もスッと目元を拭う。



朱仁は和織を抱いたまま立ち上がると、リリへと向いた。



「リリ殿、和織が世話になった。感謝いたす。」



一礼を返す。すると左右に大きく首を振るリリであったが、泣いていて声が出せなかった。その様子に葉月がクスッと笑みを浮かべる。



こうして一件落着・・・という訳にはいかなかった。



 



突如として朱仁に向けて放たれた一閃。



その気配に即座に刀を抜いて叩き落とす。



そして地面に落ちたのは一本の投げクナイ。



「何者でござるか?



そっと和織を下ろしながら飛んできた方向に目を向ける。その先には岩があり、その上にいたのは海賊衣装の女性であった。




「久しぶりね、兄…いえ、池内朱仁!」



朱仁を知る人物らしく、3人の視線が集中する中、朱仁が驚きを見せる。



「な、何故お主が・・・。」



「言ったでしょ。3年前にあなたがいなくなる前に…。絶対あなたを許さないと!



「クッ。」



奥歯を噛み締める朱仁。すると目の前の女性は言う。




「今日の所は退くとするわ。どうやら村の自警団が攻めて来てるようだから。でも、絶対にお前は許さない!必ずこの手で・・・。」



そう言い残すと煙幕を叩きつけて姿を眩ませる女海賊。



「ま、待て、静羽!」



だが、潮風で煙幕が消えた後は何も残っていなかった。



同時にこちらへと駆けつけてくる自警団の面々。



リリと葉月が説明に向かう一方で、和織が朱仁を見上げて尋ねた。



「誰でしゅか?



投げ捨てられたクナイを拾い上げながら、朱仁は静かに答えた。



「静羽…、我が亡き妻の妹でござるよ・・・。」



 





「然らば、ここまでで良うござる。色々世話になり感謝にござるよ。」



村のはずれ、身支度を済ませた朱仁と和織は次の地へと旅立とうとしていた。それをリリと葉月が送りに来ていた所だ。



「こちらこそ、山賊と海賊の両方が解決されて感謝してるわ。本当にありがとう。」



葉月が首を左右に振りながら言った。



「ありがとでちたでしゅよ。海も見えて楽しかったでしゅよ。」



和織が乳母車の中から伝える。



「和織ちゃんもありがとう。所で次はどちらに向かうの?



その問いかけに和織も朱仁の顔を見上げる。



「そうでござるなぁ。和織に見せたいものはまだまだいっぱいあるでござるからなぁ。一先ず、砂漠側経由で大漁房へ向かおうかと考えてござる。」



「砂漠ですか?



「うむ、知り合いがおる故、会うつもりにござる。」



「そうですか…。それではどうぞ旅のご無事を祈ってます。お気を付けて。」



葉月が礼をしながら言う。それに礼を持って返す朱仁。



「かたじけのうござる。リリ殿、葉月殿も仲良うお過ごし下され。」



和織も朱仁の礼に倣って頭を下げた。



ただ、この場にいる中で一人だけが俯いたままだ。胃痛も元気いっぱいの少女だけが一切言葉を発することなく佇んでいる。



「ほら、リリもちゃんとあいさつしなきゃ。」



声をかけるがリリは口を真横に結んだままだ。



「どうちたでしゅか?」



乳母車から見下ろす和織。しかし、朱仁はその心境を察して乳母車を押しかける。



「リリ殿、また機会があれば参る。その時はまた和織と遊んでやって下され。」



そして身を翻いた朱仁は去って行く。



その手の先にある乳母車から、和織が身を乗り出して後方の二人に手を振る。



「葉月ちゃーん、リリちゃーん、また遊びに来るでしゅよぉー。またでしゅよぉー。」




葉月は笑顔で手を振る。そして、横にいる少女はまだ動かない。いや、動けないのだ。僅かな時間の関わりだが、リリにはとても濃い時間だったのだ。故に別れと言う事に対して気持ちに整理がつかないのだろう。



だから、友として葉月は言った。



「また会うために、ちゃんと見送らなきゃダメだよ。嫌われてると思われちゃうよ。」



途端にリリが顔を上げた。その瞳は赤く、止めどなく涙が溢れていた。



かっつて自分との時にも別れそうになったが、結局こうして一緒に居られるようになった。でも、今回は別れになるのだ。その寂しさに悲しみを覚えたのだと推測するが、こうした別れもまた大事な事である。



「ほら、ちゃんと伝えなきゃ!」



そしてリリは叫んだ。



「ワオちゃーん、元気でねぇー。また一緒に遊ぼうねー!!



両手で大きく手を振る。すると和織から、



「あい!また遊ぶでしゅよぉー。」



その言葉を残して、二人は去って行ったのでした。



 



「行っちゃったね。」



姿の見えなくなった後、葉月が呟く。それとなしに友の顔を覗き見ると、さっきまで泣いてた元気娘が、何やら難しい顔をしていた。



「どうしたの?」



そう問いかけた葉月にいつもの笑顔を見せたリリが言った。



「ねぇロンジー。僕たちも旅してみない?



 



竹林村の二人はこの後どうしたかは定かでないが、暫しの時を経て再び和織と会うことになるのは、またの機会のお話で。



そして、朱仁と和織の旅の目的地は砂漠へと向かいます。



今回現れた『静羽』の存在、そして朱仁が会いに行くと言った人物とは?



それらもまた、以降のお話で語られる事でしょう。



では、また次回。




〇お礼

リリちゃん、ロンさん、ご協力ありがとうございました。

おかげさまで、良いお話を作ることが出来ました。

この場を借りて、心より感謝申し上げます。


  • ロンディワル 2017.5.5. 19:18
    リリースをおめでとうございます。撮影も長期間になりましたがおつかれさまです。
    殺陣がやっぱり格好良い。でも和織ちゃん、それは武器じゃなくてサンマw

    それにしても新キャラ参上には驚きました。

    次のお話しも楽しみです。
  • アクアリータ 2017.5.5. 21:03
    第肆話おめでとうございまーす(≧∇≦)゚⌒
    相変わらず素晴らしい筆才ですね⌒゚(σσ;)゚⌒ムムゥ
    文章に合わせたカットSSも絶妙で非常に読みやすいです♪('∇')゚⌒
    途中伏字表現がw('◇'*)゚⌒
  • K2taka 2017.5.5. 22:39
    >ロンディワルさん
     今回はお世話になりました^x^
     色々撮ったんですけどね、お話に沿うものを選ばせてもらいました。
     ちなみに、獲物ですから、食べるための獲物なのでしゅU・ω・U
     少し含みもたせるのも、如何かな?ってとこでw
  • K2taka 2017.5.5. 22:43
    >アクアリータさん
     ありがとでしゅU^ω^U
     楽しんでいただけたら何よりですw

     今回はSS撮りにロンさんとリリちゃんにはお世話になったので、もっと使いたいとこですが
     さすがにデータ量が半端ないですからねw
     その辺りはリリちゃんの面白要素をと入れさせてもらいました!

     さぁ、アクアリータしゃんも出番来るでしゅよ!U‐ω‐U
  • タータミッツ 2017.5.6. 14:17
    船上での重心とか細かいな・・・と感心しつつ、某義足の船長とか凄いねんな~と思い返したw
  • MSXturboR 2017.5.7. 16:31
    見たよーw またとても良いストーリー、作品だったね^^
    作品を見ながらなんだかジ~ンと来てしまいました・・・たぶん今呑んでる酒の効果もまるのだろうか・・・w
    話しもうまいし、SSの見せ方やタイミングもうまい! 毎度、関心させられます ( ´∀`) イイネ
  • K2taka 2017.5.8. 00:28
    ※たくさんの閲覧、『いいね』&コメント、ありがとうございます^x^
     
  • K2taka 2017.5.8. 00:30
    >タータミッツさん
     義足で立つなんて、普通じゃ考えられないよねw
     今人気の海賊マンガで、海上レストランしてるあの爺様も大概だw
  • K2taka 2017.5.8. 00:32
    >Mさん
     (人''▽`)ありがと~。今回はゲストに来て貰ってるので、力入れてみましたw
     酒は特に関係しないと思うけどw内容に何か感じて貰えたなら幸いです^^
     楽しんでもらえるように、努力しまーす^x^
  • 超紳士 2017.5.9. 19:27
    んまっ!!
    気になる展開に鳴ってきたわぁ・・・
    てか、わおちゃんビームサーベルで戦おうよ!
  • ★ノノ★ 2017.5.10. 21:23
    うおおおおおおおおおおおお!!いつの間にUPしてたんですかwwwいってくださいww
    今回と前回出演させてもらってありがとうでした!とても楽しい時間がすごせましたよ!
    それにしても・・・リリ・・暴言はきすぎ!!ww放送禁止用語連発じゃないですかwwww
    うちのりりはそんな悪い子・・・ですwww
  • K2taka 2017.5.10. 21:40
    >虎徹さん
     気になってきたのねw
     いやいや、この稲妻の走り方とか、ビームサーベルでしょw
  • K2taka 2017.5.10. 21:42
    >リリちゃん
     今回はありがとうでした^x^忙しいと思って、遠慮しちゃったw
     こっちも大変貴重で楽しい時間でした。
     リリちゃんなら、このあたりの空気を呼んで叫んでくれるはず!って無理させちゃいました!
     ごめんなちゃい。