【AION小説】復活前夜 AION Classic応援小説!
2021.7.14. 03:06
AIONクラシック サービス開始おめでとうございます!
もともと公式掲示板で小説など連載させて頂いていた者です。
コンテストに小説部門がなくてとても残念・・・
コンテスト無関係の投稿で心苦しいですが、AIONクラシックへの応援活動として、一本短編を書きましたので、よければ見てやって下さい。
今回、ライブでは消えてしまった様々なマップや機能が復刻されると聞いて、懐かしい人たちにまた会えるようになる!と心からわくわくしています。
モルヘイム要塞の飛行移動士、ヨルンダフさん。
彼のせりふ(ディーヴァなら飛行ができて当たり前です)を聞くために
一体どれだけモルヘイムへ通ったか・・・
永遠にモルヘイムへ行けなくなると聞いて心から悲しんだのを覚えています。
おかえりなさい、ヨルンダフさん。またお世話になります!
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【【 復活前夜 魔族の場合 】】
モルヘイム要塞は静まり返っていた。
新しいディーヴァが訪れなくなって何年が経っただろう。要塞は白く、静かに氷に閉ざされ、凍てついた空気とともに緩やかに終焉を迎えようとしていた。
モルヘイムの空間移動士、ヨルンダフは息を吐いて頭上にそびえるアビス関門を見上げた。
彼の仕事は新たなディーヴァがやってきた時、飛行の初歩を教える事である。ディーヴァの訪れが途絶えた今、彼の仕事はほとんどと言っていい程なくなってしまった。飛行移動士として、他の村との連携を図るのも彼の仕事の一端ではあるが、要塞内の人が他の村へ出かけることは恐ろしく少ない。最近の彼の日課とは、要塞にある居酒屋で静かに酒を飲みながら、過去に思いを馳せるのみであった。
今日もヨルンダフは酒を飲んでいる。思い出すのは過去に送り出したディーヴァの事だ。様々な者たちが彼の元を通り過ぎて行った・・・。
羽の開き方すら知らぬ者。
高さに怯えて竦んでしまう者。
はたまた、どこかで練習して来たのか、思いのほか滑らかに羽を操り、悠々と飛び回る者。
(ディーヴァなら、飛行ができて当たり前です・・・)
自らがすべてのディーヴァに掛けて来た言葉が甦る。飛行技術はディーヴァの基本だ。アビスで自在に戦うには、武器を振りながら羽を操らねばならない。彼は真面目であったから、飛行技術の習得が魔族全体の戦闘力向上につながると心の底から信じていた。
自らの思いの中に沈むヨルンダフに、いつもなら誰も声を掛けることはない。
だが、今日はいつもとは少し違っていた。ヨルンダフの元に客人が訪れたからだ。
「ここにいたのか、ヨルンダフ」
自らを呼ぶ重々しい声に、過去へと囚われていたヨルンダフは驚いて顔を上げた。
「軍団長・・・?」
そこにいたのはモルヘイム要塞の軍団長、エーギルであった。
彼もまた、ヨルンダフよりもさらに数多くのディーヴァを送り出してきた人物である。飛行技術という限られた場面でのみ新米ディーヴァと関わっていたヨルンダフと違い、エーギルは司令部からの指示も含めて様々な側面から新米ディーヴァの面倒を見ていたはずだ。だが、モルヘイム要塞の閉鎖に伴い、彼の仕事もまた激減していた。
往時の忙しく、やつれた面影は鳴りをひそめ、今のエーギルはどこか余裕のある、隠居のような穏やかさを醸し出していた。
「話がある。よいか?」
「はい」
エーギルは重々しく切り出した。
「なに、難しい話ではない。貴様にまた頼みたいことがあるのだ」
「はい・・・?」
飛行に関わること以外、ヨルンダフに出来ることはあまりない。いぶかしく思いながら先を促す。
エーギルは深く頷き、とんでもないことを口に出した。
「かねてから我がモルヘイム要塞は、若きディーヴァの育成に携わって来た。戦闘の基礎、アビスの知識を教える。飛行技術の基礎を整え、技術を磨く。アビスへと立ち入る資格を与えるのも重要なる我が職掌の内であるが、その為には貴様の協力が欠かせぬ。どうだ、また一肌脱いでやってはくれぬか」
ヨルンダフは目を見張る。
「でも軍団長、教えるべきディーヴァがおりません」
「いるのだ」
「え・・・」
思わず口を閉ざしたヨルンダフに、エーギルはうっすらと笑って見せた。
「いや、話を急ぎすぎたな。すまない。来るのだと言った方が正しい。実は、司令部からの通達で、モルヘイム要塞の復活が決定した。時期はもう少し先ではあるが、またモルヘイムにディーヴァがやって来るのだ」
「・・・・・・・・・・!」
エーギルの言葉と共に、ヨルンダフの脳裏を物凄い勢いで何かが駆け抜けて行った。
広げられたシンプルな黒い羽。
落ちて来る若きディーヴァの影。武器を構え、打ち鳴らす羽の音。アビス関門の青く美しい煌き。
試練の輪を取り巻く風の流れ。打ち鳴らされる羽音。
絶え間ない羽音。
――――羽音。
(ディーヴァなら飛行ができて当たり前です)
(ディーヴァなら飛行ができて当たり前です)
(ディーヴァなら飛行ができて当たり前です)
それは、思い出と呼ぶにはあまりにも強い思い。
くらくらする目眩のような感覚を覚えて、ヨルンダフは強く目を閉じた。そして、目を開けたとき、既に彼の心は決まっていた。
「・・・そうですか」
動揺していた割には冷静な声が出た。
「頼めるか」
「お任せください、軍団長」
「うむ」
エーギルは莞爾として笑う。彼もまた、モルヘイムの衰退を憂える一人であったのだから。
「ではな。詳しくはまた後日」
「はい」
居酒屋を出て行く軍団長の後姿を見送ると、ヨルンダフもまた外へ出た。
そのまま頭上を見上げる。昔と変わることなく、美しい青い光を放つアビス関門が見える。
一から六までの小さい星を抱く試練の輪。かつてそこを巡っていた、数多くのディーヴァの姿が見えるようだ。
(また・・・始まる)
ヨルンダフは微笑った。自分でも気づくことなく、微笑っていた。
モルヘイムに新たな風が、また来るのだ、と。
<<Fin>>
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